「デルヴォー君、サロンは今や何処に行っても貴方の話題で持ち切りですよ。ほとぼりが冷めるまで少々私はおとなしくしている事にいたします。」
デルヴォーもうんざりした様子で答えた。
「高々肖像画一枚の事で、皆さん議論がお好きな様です。迷惑なのは・・・」
「そう、カトリーヌ・ド・レシァル公爵夫人でしょうね~。時に貴方、その肖像画の報酬を公爵に突っ返したそうですが?」
「ええ、未完成の物には値段はありませんから。」
「しかし貴方、此処の旅籠代の支払いも滞って久しいのでは?」
「ラリランダンさん、ホテル代を踏み倒しても私は画家ですが、未完成の絵画の対価を頂いたとなれば、画家ではなくなってしまいますよ。」
「貴方は、師匠のピエール・ポドゥアンに何処までもそっくりです・・・」