そこで私は、はたと心付いたのでございます。
私の成すべきことは、その不思議な少女のお相手をすることにあると。
カトリーヌ様、実のところ、その少女の姿が見えていたのはデルヴォー様と私の二人だけなのでございます。
そうして、クレマティス様のお部屋の扉を一人開けた時、私の心の中には一欠けらの恐怖心も無かったのでございます。
よしんば少女が幽霊であったとしましても、迷った霊魂、はたまた精霊であったとしましても、私は愛の心を持ってして、その少女と膝を交えたかったのでございます。
はたしてお部屋の中には、最早少女の姿は消えておりました。
しかしながら、驚きますことに、確かに箱の中に仕舞ってあったはずのトパーズの真珠の首飾りが、クレマティス様のその細いお首に架かっていて、さながら初期の夕焼けの様な色を成して、それはそれは美しく輝いていたのでございます。
(つづく)