【あ】
アンティーク〔あんてぃーく〕
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店主「金星から!?」
客「我は3世で御座る。」
店主「あんら、其れは其れは遥か遠き所から恐縮に存じます。」
客「して、此処に有る此れは確かな物で御座るか。」
店主「何とっ、当店は物本(ものほん)しか扱いが御座居ません。」
客「時に主人、あー其の、何と申すのやら。約めて言うなれば、此れはデータの残っておる品ですかな。」
店主「法律には触れましょうが、データが残って居らなければ売り物には成りませぬ。
然し貴殿は眼(まなこ)の肥えた御方だ。此れは滅多に出る事が無いクールな一品で御座います。
ほれ、此処に記されて居る様に、メイド・イン・ヤパン “ りんご社製 ” と有りますな。1968年製造の日本製のスマートフォンに間違いは御座居ません。」
客「だが、其の時代にスマホは・・・。」
店主「あんら、御存知無い。
最早其の頃、地球上には此れが蔓延しておったと言う事は事実。明らかに御座居ましょうに。」
客「うむ。して此れは有らまし御幾らで御座る。」
店主「唯の99万9千865フリヴニャで御座居ます。」
客「高。負けらっしゃい。」
店主「然らずんば、99万9千フリヴニャで何うで御座る。」
客「未だ高し。其こにトラヤの羊羹一本付けらっしゃい。」
店主「良御座んす。」
客「では包んで下さんし。」
店主「ひっひっひっ。」