山梨鐐平

シンガーソングライター

◀ 戻る

6/21/2021

「ジャンヌ様!」と叫ぶと、ディアーヌは二人に駆けより、羽織っていたショールでブランシュ夫人の胸を覆い隠しました。
ブランシュ夫人は、その青い目でディアーヌをじっと見つめると「許して・・・」とおっしゃったのです。
私は、ブランシュ夫人の硬直して剣の持ち手から離れなくなっている右手の指、その長い指一本一本を、ゆっくりと折れない様に、ある程度力を入れて伸ばし解いていったのでございます。
金属音を立てて、その美しく装飾された恐らく16世紀の剣が地面に落ちると同時に、
それまで気をしかと保ち続けていらしたブランシュ夫人は、静かにカスタルディ院長様の腕の中に失神なされていきました。
レシァル公爵夫人、この良からぬ事件には、アルトワのシャルル・ド・ルヴィ伯爵なる者が、大きく関わりを持っているのでございます。

(つづく)