山梨鐐平

シンガーソングライター

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6/24/2021

すると突然、族のひとりが背後からブランシュ夫人を羽交い締めにして持ち上げようとしました。
ところが何せ、ブランシュ夫人は長身であり、それが無理だと分かると、足をかけてもろとも押し倒そうとしたのだそうでございます。
そこでブランシュ夫人はやむなく、御自分の脇腹をその剣で貫通させ、背中にぴたりと張り付いていた、その族の心の臓をひと突きで破り、息の根を止める手段を取ったのでございます。
血の海と化した床を、いつの間にかはいつくばって近づいて来ていたルヴィは、その太い指で恐れ多くもブランシュ夫人の足首を掴むと、館内に響き渡るほどの大声で、(ブランシュ夫人の申しますには、高いファの音で)恐ろしい意味不明の寄声を上げたのだそうです。
ブランシュ夫人は剣の切っ先を、ルヴィのだらりと垂れたそのクラヴァットの喉元に当てますが、まさにその時、カスタルディ院長様の「ペトロニーユ!」と言う呼び声に、ブランシュ夫人は振り向くと同時に我に帰ったのだそうでございます。

(つづく)