カトリーヌ･ド･レシァル公爵夫人からリシャール・ラリランダンへ
リシャール様がおっしゃる事も一理あろうかと思います。
何故と言うに、私が宮廷を舞台にした物語を書き記してゆけるのも、生々しい記憶と資料がたまたまそこにあったからに他なりません。
しかしながらリシャール様、女が自分の命を守らなければならないと言う時には、生まれや血筋に関係無く、自分でも計る事の出来ない術や力が出るものでございます。
ジャンヌの命が有るからこその言い様ではございますが、この度のリールに於ける揉め事も、特段変わった事件では無いのでございます。
事程左様に、私共女は、甚だ大形な言い回しをお許し下さるのならば、自分自身の身を護らんが為の人生を歩んでいるのでございます。
さて、ジャンヌのお側にはカスタルディ院長様が付いていて下さるとは言え、リシャール様にはディアーヌと共に、当分の間リールに滞在し、ジャンヌの｢心｣の回復を見届けて下さいます事を、切に希望いたします。
18++年
+月+日
パリ