山梨鐐平

シンガーソングライター

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7/3/2021

カスタルディ院長様が扉の三つの鍵を開けると、その重たい扉はゆっくり音も無く開いていったのでございます。
然るに院長様が先に入り込むや否や、案の如くその扉は瞬時にして爆発音と共に閉じてしまいました。私は明白に入室を拒否されたのでございます。
扉の向こう側からはカスタルディ院長様のラテン語の祈りがやや長い間続き、踊り場に一人残された私の心を、一種不思議な世界に誘って下さったのでございます。
しばらくすると扉は、嫌嫌、渋渋、今一度、愈愈ゆっくり開いて致し方なく、私を招き入れたのでございました。

(つづく)