而して、そのふっくらとして美しいクレマティス様のくちびるに、デルヴォー様のお顔がゆっくりと近づいてゆきますと、そこに二人は長いくちづけを交わされたのでございます。
私はリシャールの手をしっかりと掴んでおりました。
カトリーヌ様、奇跡はその時に起きたのでございます。
クレマティス様がパッと目をお開きになりますと、鈴の音のようなお声ではっきりと、このように言われました。
｢アルフレッド、私を見つけて下さったのね。｣
｢うん･･･｣とデルヴォー様は短くお返事を返されました。
なぜなら、デルヴォー様の心は泣いておられて、それ以上の言葉を発することは到底不可能だったのに違いございません。
クレマティス様はデルヴォー様の目を見つめ、重ねて申されたのです。
｢私、それは長い夢を見ておりました。貴方が何処までも私を探し続けて下さっている夢を･･･｣
気が付けは、ポドゥアン先生とジャック･デルヴォー医師が、静かにお部屋を退出なさるところでございました。それゆえ私共も直ちにその後を追うようにしてお部屋を下がりましたので、実のところその後のことは誰も知らないのでございます。
18++年
+月+日
トゥーレーヌ
｢彼方の人々｣
第3部
おわり