リッカルド「ピオヴァーノさんちはどこにあるの?」
人形屋「フィレンツェの中心を美しい川が流れております。
また、そこには大きくすこぶる美しい橋が架かっております。
そこから水面(みのも)が映し出す夕焼けを見ますると、人ならば自然と涙があふれ出てきます。なぜというに、この世で一番天国に近いその景色を、心の中の魂が懐かしんでいるからなのだそうです。
しかるに、涙が出ない人は生まれ来る前は、地獄にいた人なんだそうです。
代々ピオヴァーノ家は、その橋のたもとに住んでいるはずです。」
リッカルド「そこは遠いの?」
人形屋「そうさな・・・。歩いて行けない距離ではありますまいが、子供の足ならば、3~40日ほどはかかりましょうね。」
リッカルド「歩いて行けない距離だよ!」
人形屋「失敬失敬スクザーテ、もひとつおまけにスクザーテ。」
リッカルド「・・・お弁当がたくさんいるなぁ。」
人形屋「リッカルド君、盗賊や人さらいが出没する地区もあるゆえ、お止しになったほうが得策かと・・・。」
人形屋さんとリッカルドがお話をしているあいだ、”ヴァイオリニストの少女”とアレッキーノは、ずっと見つめあったままでした。
(つづく)