静寂の中、東の空が徐々に青みを帯びるころ。
ナポリの中心にある噴水公園は、生まれたままの姿で眠る人々によって埋め尽くされておりました。
見知らぬ男性と抱き合っていた女性達は、一人、また一人と目覚め、周りを見回し、うつむき、そうして暗い空を仰ぎ見て両手を合わせ、我にかえっていったのでした。
その日、夜明けはずいぶん早く訪れました。ご存知のように太陽が噴水公園のその後を早く知りたくって、うずうずしていたからです。
されど夜明け前には、一人も残らず公園から姿を消していったのでした。
実は、この事件。ナポリ皇国の歴史にはいっさい記載されておらず、この素敵な出来事は無かったことにされてしまったのでした。
(つづく)