山梨鐐平

シンガーソングライター

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5/23/2021

その日、アルクのアンリ四世ホテルのバルコニイでデルヴォーは私に言った。
「ともあれラリランダン、あのレシァル公爵の常に冷静さを欠かない言動、素振りはいったい何処から来るのでしょう。」
「生い立ちと、教育の賜物でありましょうが、お立場を演ずる事も辛かろうとお察ししますね。」
「公爵は決して品行方正な方とは言えませんが、よしんば誤った思想を抱いたとしても、そこはこちら側の理解の薄さに問題が有るのだろうと有無を言わせず納得させてしまう様な無言の説得力が有るのです。」
「あの人達は物申す前に、一呼吸置くのです。まるでそれがルールのように。」
「公爵はまさにその証拠となる様な言葉をいつぞや語ったことがありますよ。
“怒っている時は、激情が命じ激情が語るのであって、それは私自身の言葉でなくなる。”と。」
「ほう。」
「また、公爵が嘘に対してまったく寛容でいられるのは、”フランス人の間では、嘘をつき嘘の誓いをする事は、不徳ではなく話の作法である。”などと、サルウィアヌスを引用してごまかしておられました。」