リシャール・ラリランダンからカトリーヌ・ド・レシァル公爵夫人へ
この度はディアーヌと私の為に、大変豪華な馬車を出して下さり、レシァル公爵夫人の御心使いに、私共二人は心から感謝いたしております。
お付きの御者の方は見事な鞭さばきで四頭の馬を操り、何事も無くかつ最速で私共をリールまで移動させる職務を成し遂げて下さいました。
ところが、我々がリール市に入った頃、リール女子修道院では大変な事件が勃発していたのでございます。
修道院に近づくにつれ、最初は所々に、その内青空を席巻するが如くに点々とした火の粉が混じったような黒い雲が焦げ臭い匂いと共に立ち込めてまいったのです。
リール女子修道院が燃えていたのでございます。
(つづく)