フィレンツェ行きの辻馬車に乗ると、お嬢様を連れた紳士が帽子を取って、深々と会釈をしました。
続いてお嬢様も笑顔でご挨拶をして下さいました。
お嬢様「ようこそ、いらっしゃいました。」
リッカルド「ピエルロじいさん、知ってる人?」
ピエルロじいさん「知らん。わしではなく、お前に挨拶しているようだ。」
その時、前の方の席でひそひそ話をしていた老夫婦もそろって振り向くと、立ち上がってリッカルドに会釈をしました。
アレッキーノ「僕の故郷は、優しくって礼儀正しい人達ばかりだね。
リッカルド、挨拶を返さなくっていいのかい?」
リッカルドは立ち上がり、恥ずかしそうに小さな声で言いました。
リッカルド「こんにちは。」
すると、乗り合わせた全員から大きな拍手が沸き起こりました。
(つづく)