リッカルド「王妃。ナンテールいちと呼ばれているこの美しいお庭に咲き誇っている、お花の香りを少々楽しませてください。」
イザベル王妃「クラウディオ・・・貴方、本当に馬鹿が治ったわ。どうぞ御随意に散策なさって。晩餐までにはお戻りになってね。噴水は故障中なの、ホーッホッホッホッホッ。」
王妃は超高音で笑いながら両手を広げ、踊るような足取りで奥の間に消えていったのでした。
お庭に出ると、アレッキーノとナンネルが袋から顔を出しました。
アレッキーノ「あそこだっ! リッカルド、あのバラの小径の奥の奥まで行ってみて。」
館の壁づたいにそのバラの小径はどこまでも続いておりました。作業をしている庭師達は次々と帽子を取り、リッカルドに頭を下げます。
ピエルロじいさん「お前は礼儀正しい子だが、庭師に挨拶を返してはいかんよ。ここでは自分の目には、あたかも庭師達が映っていないかのような素振りをするのが正しい。」
(つづく)