その時、お庭からお花の甘い香りを連れて、黙って風が訪れました。そうしてお部屋の中を一周しますと、香りだけを残して帰ってゆきました。
ナンネルが言いました。
ナンネル「希望をお持ち下さい。リッカルドが私達をフィレンツェまで連れて行ってくれますよ。」
リッカルド「みんなでピオヴァーノさんの工房に帰りましょう。」
ナンネル「工房に着いたら、長い間に出来た傷や汚れはピオヴァーノさんが修復して下さいます。女性陣はお衣裳を整え、お化粧直しもいたしましょう!」
アレッキーノは踊りながら言いました。
アレッキーノ「 “ 新アレクサンドル人形劇団 ” の誕生だーっ!」
団員達は皆、リッカルドやドクトンヴィル夫人に背を向けておりました。なぜならば、“ 人形は決して人に涙を見せてはならない。”
この人形界の掟(その2)を守っていたのでした。
(つづく)