山梨鐐平

シンガーソングライター

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8/4/2021

更にジョゼッペ・ロッコ氏はこのように話を続けられました。
「実のところクレマティスは、とあるヴァイオリン製作家の下で修業をしていたんじゃが、事あるごとに此処に来ては、わしの弟子達の仕事を眺めてその眼を輝かせておった。そこである日わしは彼女に”表に架かっている看板に絵でも描いてみるがよい。”
そう言ったら、彼女はその看板を外すが早いか、今デルヴォーさんが座っておられるその椅子を陣取り、夜になっても帰ろうともせず、次の朝早くわしが工房に来るや、どうにも驚く事にその美しい看板が表に架かっておったと言う訳じゃ。
クレマティスの中の、ピエール・アントワヌ・ポドゥアン氏の血が遂に動き出し、一気にほとばしり出た瞬間を、わしは目の当たりに見たのじゃよ。」

(つづく)