その日、とうとうドクトンヴィル夫人がお部屋にやってまいりました。
この日を待っていたアレッキーノにペルシャの王女は目配せをしました。
アレッキーノはここぞとばかりに、踊りながら歌いはじめたのです。
ドクトンヴィル夫人はと言いますと、いつものように窓を開け、ソファに座って小さなハープを奏ではじめました。
アレッキーノはますます踊り大声で歌います。
しかしながら実際はドクトンヴィル夫人の奏でるハープの音だけが、窓をすり抜けてきたそよ風に乗って、お部屋の中を静かに回っているだけなのでした。
(つづく)