デュノワ「リッカルド王子がお気の毒でなりません。」
ピエルロじいさん「デュノワ、それは違うぞ。双子が生まれて、ただちにどちらかを選ばねばならなかった女王の苦しみは、我々には到底計ることはできないものだが、女王の罪の意識は如何なるザンゲもその苦しみをいやすことは出来ず、いわんや自身の体に痛みを与え続けても、なおも悲しみ募るのみ。それゆえに女王は、今もリッカルドに対して狂気さながらの愛情を常に肥大化させてゆくことで、精神の釣り合いをギリギリ保っていられるのだ。宿命とはいえ、クラウディオ王子の受けるべく母の愛の大半は、二度と逢うことは叶わない、リッカルドに注がれているのだ。
リッカルドは王族の血と、漁師の魂を併せ持っているが故に、心が健康で、強く、優しい男に育っているよ。」
(つづく)