山梨鐐平

シンガーソングライター

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7/24/2021

そうして、遂に老女はその鋭い視線を私に向けたのでございます。
老女の目は中心が白く、瞳全体は緑色を帯びておりました。
それは、否応なしに不吉な予言を宣い、不安を悪戯に助長させる前兆の、言わば儀式であると察するや、私は老女の邸を又しても逃げる様に飛び出し、再びカンポ広場に向かったのでございます。
消えておりました。
ポドゥアン先生、先程まで建っておりました”見栄の塔”は、そこに影すらも無くなっていたのでございます。
振り向けば、大聖堂の階段で出会った少女が細いステッキを持ってスキップをしながら近づいて来ました。
「お探しのお姉様は・・・何処にか帰られました。」
そこで私は旅籠に戻り、クレモナに旅立つ支度を始めたのでございます。

(つづく)