クレモナに至り着きますと、雨が降っておりましたが、ピロン氏の工房を探しております内に雨も止み、青空が見えてまいりました。
クレマティスが生活している所で在るやと思えば、全てが輝いて愛おしく見えるのでございました。
時に、クレモナの街は木の匂いと、甘いワニスの匂いが調和して、驚き込るほど心が安定して行く地なのでございます。
一時間程歩いた頃でございます。
看板は無く、入り口に小さな手書きの文字で、”楽器ケース・運搬用ケース・家具・棺桶の注文も可”
「マルチェッロ・アルマンド・ピロン」
このように書かれた扉が目に入ったのでございます。
(つづく)