そこへ、いつの間にか扉を開けて立っていたマダム・ポヌーズが、デルヴォー様にお出しする、お茶とお菓子の盆を持ったまま、このように言ったのでございます。
「アルフレッド様、黙って聞いておりましたがね、昔話や歌の文句は素直に受け止めにゃあなりませんよ。四の五の言ってる場合ではありません、お庭に下りて邸の壁をよじ登るのです。そうやってこの部屋に忍び込むのです。
そうしてから、クレマティス様にこの上なく優しいくちづけをするのですよ。
壁の登り方は貴方の知っての通り、貴方が16の時に登りに登ってクレマティス様の窓を叩いた事件を、私ゃ忘れていませんよ。
クレマティス様はその時、頑として窓を開けず、下りられなくなってしまった貴方の果ては、やっとのことでポドゥアン様の寝室に至り着くことになった分けです。
今日は窓は開いておりますよ。
さあ皆様、お庭に下りてアルフレッド様を応援致しましょう!」
その時、デルヴォー様の目は輝いていたのでございます。
(つづく)