リッカルド「演奏のお邪魔をしてしまいました。ドクトンヴィル夫人ですね。アレッキーノからお話は伺っております。」
そう言うと、リッカルドは袋を少し前に差し出して、ドクトンヴィル夫人にアレッキーノを見せました。
ドクトンヴィル夫人はこれが夢でも幻でもないことを知ると、長椅子から立ち上がり、その場で膝を折ってリッカルドに挨拶をいたしました。
ドクトンヴィル夫人「お察しの通りでございます。クラウディオ王子。
私は王妃の音楽教師をさせていただいております、マリー・ド・ドクトンヴィルと申す者でございます。時にこのお部屋にはお庭に通ずる扉が無いのでございます。故に窓越しでのご挨拶をお許し下さいませ。」
リッカルドは一歩前に出て言いました。
リッカルド「人形達に愛をもって接して下さった貴方の心に、私は深く感謝しています。」
不思議なことにリッカルドは、自然と信の王子になっていたのでした。
(つづく)